2015年3月6日金曜日

賠償額は「元本から差し引く」

最高裁判決

裁判ハンマーの画像

分かれていた判断を統一


労災事故の損害賠償を求める裁判において、遺族補償年金などが支給された場合、労災賠償額を「元本から差し引く」との判断を最高裁大法廷がしました。

あまりニュースなどで取り上げられていないようなので、触れておきます。

最高裁大法廷:賠償額は「元本から差し引く」に - 毎日新聞

今回の判決のポイントは、「労災事故の遺族に支給された損害賠償金から、別に受け取った労災保険の支給額を差し引く際の計算方法」についてです。

最高裁では、小法廷の判決で、2004年に、「遅延損害金と優先的に相殺すべきである」という判決を、2010年に、「元本と相殺すべきである」という判決を出していました。

今回、最高裁大法廷が、
「労災保険は、労災事故で得られなくなった収入などを補填するもので、支払いの遅れを理由とする遅延損害金とは性質が異なる。性質が同じで相互に補完性のある損害額の元本との間で相殺するのが妥当である。」
と、2010年判決の判断に統一したわけです。

労災保険の支給額を、利息分から差し引くのではなく、損害額そのものから差し引く計算方法をとると、損害額そものが少なくなり当然利息も減ります。
被害者が得る損害賠償額が少なくなることになります。

民法には、491条で弁済の充当を、
「債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。」
と、利息からの差し引きを元本からの差し引きより、先に行う旨を規定しいることと、
「元本から差し引くべき」
との司法判断があることとの対立があったことで、争われたと考えられます。

今回の最高裁の判断は、遺族補償年金に限定したものですが、労災給付全般や、交通事故との絡みなどの実務で、この「元本から差し引く」という計算方法が、広く採用されていくことでしょう。

ちょっと、頭に置いておきましょうね。


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